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HSP概念の流行について

数年前からHSP(Highly Sensitive Person)という言葉を非常によく聞くようになりました。敏感で繊細な気質のことを指しています。


カウンセリングの初回面接では、まずどのようなことに困っているかをクライエントに尋ねます。すると、必ずしもHSPという言葉を出すわけではありませんが、「これはHSPの特徴として巷で言われていることらしい」と感じられる内容をお話になる人に出会うことがあります。そこで、「HSPについての文章などをお調べになりましたか?」と聞くと、「そうなんです」と返事が返ってくることもあります。


そういう主訴の表現の仕方に、何ら問題はありません。それが自分と向き合うきっかけになることもあるでしょう。ところが、HSPという概念は今の世の中ではかなり誤解されているものの一つなのです。


飯村周平さんが最近出された『HSPの心理学・科学的根拠から理解する「繊細さ」と「生きづらさ」』という本があります。そこには、「心理学の研究ではHSPは「生きづらい人」に貼るラベルではありません」とはっきり書いてあります。では何かというと、「環境感受性が極めて高い人」を表す言葉とのことです。面白い本ですので、興味のある方は一読をお勧めします。HSPは他の点でも、さまざまな誤解がある概念であることがわかります。


流行というものは怖いもので、ともすると「生きづらさ」の理由は何でもかんでもHSPだと決めつけるような暴論までも生み出しかねません。そして怪しげなビジネスに誘導されてしまう懸念もあります。


私は「自分はHSPで困っています」という人に対しては、どんなことに困難を感じているのかをさらに詳しく具体的に尋ねるように心がけています。そうすると、神経質傾向や発達障害、うつ病、PTSDなど、さまざまな性格傾向や障害特性、精神疾患の可能性が見えてくることも多いのです。生きづらさを抱えている人は安易な自己診断はしないで、精神科医や臨床心理士などの専門家の判断を求めることを強く推奨したいです。そうすることで無用な心配は払拭できると思います。


                               ツグミ(利根運河)   

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