「正しい方向への小さな一歩」と訳します。今回は認知行動療法的視点から、このお話をしましょう。
何か新しいことを始めるときに障壁になりがちなことの一つは、その課題を実際以上に困難なもの(大きなもの)として考えてしまうことだと思います。この思考は本人が意識化できていることもありますし、無自覚なこともあります。
一例を挙げると、カウンセリングの面接で気分転換の必要性が話題になるときがあります。カウンセラーの私としては、たとえば散歩や庭仕事などの、比較的すぐに取り組めるささいな行動をおすすめしたつもりでした。
ところが、クライエントは遠方への旅行とか、トレーニングジムへの入会とか、大きなことを考えていたときがありました。そのときは、カウンセラーは伝え方を工夫しないといけないと思ったものです。
もっとも、最終的な目標としては大きな行動につなげなければいけないケースもたくさんあります。しかし、無に近い状態から一歩進めるためには、難しく考えないで、とりあえず最初の小さなステップを踏み出してみることが大切です。その積み重ねの先に、大きな達成があるというわけです。
次にやるといいことは、そうやって行動していれば見えてくるものです。やってみて、何か違う感じが出てきたら、別のことに方向転換してもいいです。意外に面白かったら、続けてみればいいのです。「はじめの一歩」は実験的試みでもあるのです。
たとえば、はじめから何かに「入会する」など決定的なことをしてしまうと、やめたくなったときに面倒なことになります。とくに青年期の人は、「実験的試み」が重要です。
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