前回は「過剰な期待を減らす」という観点からアンガーマネジメント(怒りのコントロール)の基本についてお話ししました。今回は同じく重要な見方である「怒りの感情の性質」という観点からご説明したいと思います。ご関心のある方はお読みください。
① 不安や苦しみ、悲しみなどのネガティブとされる感情と同様に、怒りの感情そのものは「すべて悪いもの」ではありません。よってすべての怒りをなくそうとする必要はありません。
誤解を恐れずに言えば、怒りを契機として、ものごとが解決に向かったりお互いの理解が深まったりする場合もあります。また、たまったエネルギーが発散されてすっきりすることもあります。怒りを抑え込んでいるために症状が出ているケースなどでは、怒りの表出が回復のカギになることもあります。
一方、怒りにより暴力をふるうなどの行動が生じ、ものごとをより解決困難な状況に導いてしまう場合もあります。あとで後悔の感情を招き、冷静になれなかった自分を悔やむこともあるかもしれません。うまくコントロールすべきなのは、この「破壊的に働く怒り」なのです。
② 表に現れた怒りの感情の裏には、さまざまな別の感情が潜んでいると言われています。この考え方を使うと、怒りが生じた経緯を深く理解できることが多いです。
これは「怒りの氷山」と呼ばれている図で表されます。水面上に現れた氷山の一部は「怒り」を表していて、より大きな水面下の部分は「心配、苦しみ、悲しみ、恥ずかしさ、プライドの傷つき」などの感情にたとえられています。
自分自身や相手の怒りを理解する時、この怒りの氷山の図が役に立ちます。激しい怒りの背後に相手を心配する気持ちがあることもありますし、穴があったら入りたいほどの羞恥心が垣間見えることもあるわけです。
たとえばある人がプライドを傷つけられた時に、その痛みを和らげるために人に当たるということがありえます。心の傷つきへの反応として怒りが出てきているわけです。
(海とカルガモ)
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