以前の(1)ではカウンセリングで実際に何をするのかについて、ストーリーを組み立てるという観点から、(2)では診断と見立ての観点からお話しをしました。今回は「対話することの価値」という観点からお話しします。違う考え方のカウンセラーもいるかもしれませんので、あくまで私の考えを述べます。
カウンセリングはもちろん情報のやりとりも含まれますが、単なる情報交換ではありません。もし情報だけが必要なら、ひとりで本やインターネットに当たればわかる場合も多いでしょう。
カウンセリングに対して、悩みを話せばすぐに解決方法を教えてもらえて、即座に問題が解決するイメージを抱いている人が最近は多いようです。しかしながら、それは全く間違いというわけではありませんが、実際のカウンセリングはもう少し違う場合の方が多いと思います。
実際はカウンセラーに見守られながら、相談者の方が自分の気持ちや感情と向き合って、地道に言葉にしていく作業を続けていくイメージです。
カウンセラーの私から見ると、相談者の方が単に知的な会話をしているだけなのか、それとも気持ちに触れた話をしているのかがわかることがよくあります。それは話し方や表情・身振りなどの手掛かりからも判断できます。
知的な議論だけでは、カウンセリングがなかなか進展しないことも多いのです。それはなぜかというと、情報のやり取りだけでは心が置き去りになってしまうからだと私は考えています。心を扱っていくためには、感情を伴った理解が必要になるのです。
カウンセラーは、相談者の方によっては自分の気持ちに触れることが苦手な人がいることももちろん知っています。そういう場合、カウンセラーは相談者の方が落ち着いて話せるように手助けしていきます。自分の心を話すということは、案外簡単ではありません。
生きた人間という聞き手を前にして自分の気持ちを言葉やイメージにしていく過程そのものに意味があります。その体験を通して、自分の中にある回復したり成長したりする力がうまく機能するようになっていきます。実際にカウンセリングを受けてみると、話していくうちに思いがけない見方・感情が生まれてくることもあります。
ヒヨドリ(本橋撮影)
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