前回に続いて、ここでは乳幼児の人見知りについて少し掘り下げて考えてみましょう。なぜ取り上げるかというと、カウンセリングへの応用も含めて、発達的な観点でとても重要な事実が観察されるからなのです。
乳幼児は、はじめの段階では、未知のものに囲まれた世界に生きています。見るもの聞くものが馴染みのないものばかりで、どう対処したらいいかわからない気持ちです。そこでは不安が生じます。しかし、周りを探索する行動が増えてくると、世界の中にだんだんと既知のものが増えていきます。
そうすると、世界が未知のものと既知のものに二分されるようになってきます。その結果、未知のものがはっきりと意識されるようになります。
そこで生じるのが、精神分析学者のスピッツが提唱した「8か月不安」と呼ばれる人見知りの不安です。子どもは母親から離れることが不安になり、後を追うようになります。母親が不在だと、不安で泣いてしまうことも多くなります。知らない人に出会うと、母親にしがみつきます。この母親とのつながりは「アタッチメント(愛着)」と呼ばれます。
じつはその後の段階で、乳幼児が見知らぬ世界へ向けて好奇心を感じ、探索活動を進めていけるためには、養育者との間で安心感を持てていることが土台になるのです。
この事実は、カウンセリングでさまざまな症状や問題を理解、解決していくときに、きわめて参考になる考え方の一つだと思っています。「8か月不安」や「アタッチメント」はカウンセラーになる人は、どこかで必ず習っている知識だと思います。
(シジュウカラ)
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