分断社会の心理学
- しまうまさん
- 4月8日
- 読了時間: 3分
更新日:4月11日
最近のニュースを見てみると、アメリカや韓国の社会などの分断をはじめ、他にも経済・地域格差、性別・世代間のギャップ、価値観の相違などの話題が紙面を賑わせています。分断が心理的な溝をつくり、人々の相互理解が難しくなっているのです。意味が拡散しているほどに流行している、いわゆる「分断社会」という言葉で表されるこの現代的現象について、心理学ではどう考えているのでしょうか? その一つの見方を海外文献から取り上げてみたいと思います。
「異なる政治的見解を持つ人々などへの敵意は、誤解に基づいていることが多い」と考える心理学的研究があるようです。その誤解を詳しく言うと、たとえば実際以上に、相手側が自分の側に対して攻撃的とか、搾取的であると見なす場合があるということです。その結果、相手側が自分に対して有害であると即断し、簡単に相手を憎むことになります。この場合、内面の憎悪感情を正当化する、外在化された極端な理由が必要というわけです。
誤解を解くために必要なことは、やはりファクトに基づいた正確な認識でしょう。そのためには、「直接会ってみること」や、「本音が言える関係性」、冷静かつ思いやりを持って「聴くこと」「観察すること」、「自分自身の思考や感情に対するモニタリング」が役立つでしょう。もちろん、ケースによっては会わずにしばらく冷却期間を置いた方がいい場合もあるでしょう。
さらには、「おたがいの差異に過度に焦点を当てることが、社会における無作法を助長する」という見解もあるようです。そのため、とくに政治的な意見などでは、社会の共通の目的と課題に焦点をあて、つながりを増やす必要があると考える人もいます。必ずしも、すぐ相手を説得したり自分が折れたりしなくても、まずおたがいの共通部分を理解することは可能と考えられます。
一致した部分について話し合うことで、意見の相違が目立たなくなります。たとえば、やり方は違っても、目指すところが同じ場合はありえます。共通のメリットを探すやり方もあります。立場は違っても、似た感情を抱いているような場合もありますね。
「相手の主張や気持ちを正確に捉えること」、「共通の部分に着目すること」、この2つは、集団間の紛争解決だけでなく、個人間のトラブルの解決にも通じる基本原則と言えるでしょう。たとえば、アンガーマネジメント(怒りの感情コントロール)においても、重要な視点だと思います。他にもいろいろ原則はありますが、今回はこの2つだけ紹介しておきます。
昨今の世界情勢を見ると、多様な局面で社会の分断はきわめて身近な現代的課題になってきています。どれも解決は容易ではなく、とても難しい問題ですね。しかし、あきらめるわけにもいかない感じがします。それに対してどう考え、どう対処していきますか? カウンセリングでもっと細かく具体的に考えていくこともできますよ。
引用・参考文献
American Psychological Association(APA) Monitor on psychologyのインターネット記事より
Managing conversations when you disagree politically(2017)
What the psychology of conflict zones can teach us about incivility(2025)

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