うつ病になりやすい人は努力を倍加させることで切り抜けようとする」と中井・山口先生の『看護のための精神医学』には書いてあります。成果が出なかったり能率が落ちていたりする原因を、「自分が怠けているからだ」と考え、さらに「必死に頑張る」ことで打開しようとする人はたしかにいます。
場合にもよりますが、そういう傾向が顕著なうつ病の人に対してカウンセリングでは通常、「休息」することを勧めます。私がよく使う比喩としては、「今のあなたの状態は、車がぬかるみにはまり、そこから脱出しようとしてタイヤをむやみにフル回転させて、さらに疲弊して堂々巡りをしているようなものです」などと伝えます。
そういうイメージがピンとくる人は、ゆっくり過ごすことの必要性を直観的に理解してくれる場合もあります。なかには、そう言われても、「休むのは何か良くないことをしている気がする」などと語る人もいます。努力して解決する行動パターンが固定化している人によく見られます。責任感の強い、他人に仕事を任せられない人に多いようです。
膠着状態から抜け出るために、人によっては分厚い本を読破しようとしたり、何か訓練的なことを始めようとしたりして、疲れている自分にますます負荷をかけようとしてしまうこともあります。よく観察すれば、心身は症状なりサインなり、何らかの形で「無理をしていること」を知らせてくれています。
ものごとを解決する方法は、「努力や根性」だけとは限りません。時間が解決に導いてくれることもありますし、他人の協力を得ることが必要なときもあります。抑えていた気持ちを言葉にしてみたり、「考えない」練習をしたり、一旦立ち止まって落ち着いた目で全体を俯瞰してみたりすることも役に立ちます。
カウンセリングで話を進めていくと、努力以外の打開策が見えてくることがあるのです。以前とは少し異なる対処法に気づいてきたときこそ、それは回復の兆しです。
参考文献 中井久夫・山口直彦 『看護のための精神医学』 医学書院
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