心理学はほとんどが輸入品である。
フロイト、ユングには土居健郎、小此木啓吾、河合隼雄などベストセラーを生み出し、影響力のある大学関係者が現れた。しかし、アドラー心理学にはそれがなかったのだ。
そのため、臨床心理士の資格制度に伴う大学院教育にも、アドレリアンはあまり携わっていない。大学院はたかだか2年の教育に過ぎないのだが、そこでのオリエンテーションがその後にも影響している。
このように、大学では広がらなかったアドラー心理学が、臨床心理士でない人々によって産業・キャリア・自己啓発分野に広がったのは、大学のテリトリーやヒエラルキーの勢力とは関係なく、アドラー心理学の魅力のなせる業ではないだろうか。そして、近年の『嫌われる勇気』の影響も大きい。
フロイトやユングが心理療法の専門家を育てることを重視していたのに対して、アドラー心理学が元々、専門家のみならず、教員の教育支援や親への子育て支援など、広く公共から家庭まで支援していたこともあるだろう。
アドラー心理学が学術的に治療、臨床、学問、研究に適していないというわけではない。日本での蓄積が少ないのだ。そんなわけで、アドラー心理学に興味を持たれた方は学術研究、そして研鑽の場として日本個人心理学会を利用してくれたらと思う。
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