(1)で述べたように、深い悩みの状態や長年の性格を根本的に変えることは容易ではありません。それでは、カウンセラーはそのような人に対してどのように援助するのでしょうか?一つの例を挙げます。
「自分を変えなければいけない」と思って焦っている人の特徴の一つは、「問題を絞り切れていない」ところにあることが多いようです。つまり、「自分を変えなければいけない」という自己認識は、かなり漠然とした捉え方です。
そういう場合に、もっと具体的に、今の自分にとってどういう場面でどういうことをしてしまうことが問題なのかをピンポイントに捉えるようにしてみましょう。自分自身をよく観察し、問題のありかを正確に突き止めることが大切です。
たとえば、ある人は「目上の人の前で緊張して、うまく自分の要望を話せなくなること」が課題になっていると気づきます。もう一人は「初対面の人との交渉の場面で、余計なことを言ってしまうようだ」と気づきます。また別の人は「大きな行動を起こす前に、信頼できる人の意見を聞かないこと」が関係していると理解します。カウンセラーはこのような課題を見出すお手伝いが得意です。
これらは、「自己肯定感を高めたい」とか「性格を変えたい」などという捉え方よりも、ずっと具体的で細かいところを把握していますよね。そして、それらを踏まえて目標も立てやすそうです。大目標を小さな目標に分けて、段階的に挑戦していくことも可能です。
人間は、漠然としていた問題の輪郭がはっきりしてくるだけでも、希望が見えてくるものです。問題が明確化すれば、自ずと目標や解決方法が浮かんでくることもあります。そして一つの問題が解決すれば、将棋倒しに別の問題の解が見えるときもあります。
長期にわたって人間的成長をめざすカウンセリングもたしかにあります。その場合は期間的にはふつう年単位で考えていく必要があります。しかし、必ずしもそれをする必要はありません。「問題を絞る」ことによってもっと短期に解決できるカウンセリングも多いのです。
カワウ( 葛飾区 水元公園 )
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