前回は、野外のフィールドで楽しむ自然観察のコツとして「一か所に留まり、感覚を研ぎ澄ます」ことをお話ししました。今回は「室内に持ち込まれた自然」のお話をしたいと思います。
最近、自室に気に入った小さい観葉植物を置いて、水をあげています。水のやりすぎは良くないらしく、透明な鉢の、下4~5分の1ぐらいまでが限度です。しゃんとした葉があおあおとしていて、生命力を感じます。
ロールシャッハテストでもたいへん有名な馬場禮子先生はかつて『臨床心理士への道』という本のなかで、相談室のインテリアについて尋ねられ、「まずは、落ち着けること。それから、水とか木とかを置くと、そこにいろんな投影が可能なんです。」と述べていました。それは絵画のなかの水や木でも意味があるようです。
「湖を描いた風景画」の例を挙げて、「日によってこの湖の水、とても明るいところが目についていたんだけど、こっちの方が暗いんだなということに気がつきました。」と話す人がいると書いてあります。同じ人が同じ絵画を眺めた場合でも、気分によって見るポイントが変わるのは、なかなか興味深いことです。
投影というのかはわかりませんが、私も自室にもの言わぬ植物(そして水)の存在があるだけで、居心地の何かが変わる感じがしています。見ているだけでこころに働きかけてくるというのでしょうか、「生き物の世話をする」要素もそこに加わり、能動的な楽しみにもなっています。
私の身近にはいませんが、驚いたことに面接室で自分の横に犬をはべらせているカウンセラーもいるという話です。もっともこの場合は、クライエントの心を読むためという理由があるそうですが。これは、なかなか真似ができませんね。
話が少し脱線しました。「やはり野に置け蓮華草」ということわざもあり、部屋に持ってこないで本来の自然のなかで観察してこそ美しい花もあるとは思います。ただ、インテリアとしての植物の存在一つにより、こころの潤いをもたらすこともできるのです。
しまうまカウンセリングの面接室にも、センスのあるスタッフの計らいにより、いろいろな面白い工夫が施されています。こころに向き合うには、物質的な環境もとても大事ですね。
( もず )
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