今回は「話しやすさ」とは何なのかについて、考えてみたいと思います。相談室を訪れた人にとっての「話しやすさ」のことです。
これはたとえば、相談室の部屋のデザインや雰囲気、カウンセラーの人柄などの視点から考察することもできます。私の過去記事でもある程度ふれていますが、これらも大事な視点だと思います。しかし、今回はカウンセラーとの関係の視点から述べてみましょう。
コミュニケーションのあり方が変質してきている今の時代において、再び考え直さないといけないと感じていることの一つは、対等性ということです。もちろん、悩みを抱えた相談者と職業的専門家という関係ですし、年齢も離れている場合もあるため、友達のような対等性とはニュアンスが異なります。ここで取り上げる対等性とは、相談者の自由意志が尊重されるという意味での対等性のことです。
言い換えれば、対話の双方向性、強制されない関係、インフォームドコンセント、選択の幅と時間が与えられること、などですね。程度の差はあれ、これらが不在な関係は、たとえば「心理的操作」などと言われ、カウンセリング的ではありません。
具体的場面で考えてみます。カウンセラーが助言をするにしても、双方向的なやりとりを大事にしていく場合があります。たとえば、次のような感じになるでしょう。
「今のところ私としてはこうしたほうがいいと思うけれど、なにか思い違いをしているかもしれません。あなたはそれについてどう思いますか。何かアイデアがあったら、お話ししていただけますか。ゆっくり一緒に考えていきましょう。」
たとえば、カウンセリングの方法や終結についても相互の納得で決めていけることは大切です。これらは一方的に決定されることではありません。相談者の主体的決定が尊重される対等な関係が基盤にあって、それが安心感につながり、自分の気持ちをのびのびと語れる雰囲気を生み出すのではないでしょうか。
補足ですが、今までの人生において対等な関係性に著しく不慣れな相談者の方の場合、どんな関係に「話しやすさ」を感じてもらえるかについては、さらに複雑な考察が必要になってきそうです。その解明もまた重要ですが、別の機会に譲ります。
( 谷津干潟 )
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